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■化学物質過敏症の予防
 このままではアレルギーと同様化学物質過敏症の急増が予想されます。私が思うに不正咬合と同様、21世紀の病気となるでしょう。予防のためには、まずこの病気が社会的に広く理解されることが求められます。それが早期発見早期治療につながります。
 またこの病気はごく普通の人にも起る可能性があるという理解が必要です。化学物質過敏症の患者さんは坑道中の「カナリア」の如く、化学物質に溢れる現代社会へのアラームといえないでしようか。建築物に関しては一般の住居では一定の基準が提唱されています。それは喜ばしいことですが、必ずしも基準値を守った建物が安全とは限りません。できる限り自然のものを使用することです。特にアレルギーのある人、過去に新築や家具店などで刺激、違和感を感じた人は化学物質過敏症対策を取ったほうがよいでしよう。普通の化学物質過敏症の対策の無い新築に入居されるときは、これが絶対というわけではありませんが、特に2〜3ヵ月は暖房、換気を徹底し、化学物質を気化させることで一定の予防が可能です。入居前にも1〜2週はこうした対策が必要です。私の経験では三年以上たった中古建物はほぼ安全な選択といえるでしょう。しかし、リフォームの際には注意が必要です。
 また自宅ばかりでなく公共的建造物での発症もあります。今後は公共性を考慮して化学物質過敏症対策をたてるべきです。濃度基準も必要ですが、化学物質過敏症の危険が去るまでそれが表示されなければなりません。うっかり患者さんが近づいたら大変だからです。また化学物質を扱う全ての業者が製品に化学物質過敏症を起こす可能性があることを表示しなければなりません。私はタバコの警告と同じようなものを想定しています。化学物質過敏症を起こす物質には、パラジクロロベンゼンのように発癌性が判った例や環境ホルモンとして働く物質もあります。そのような危険な物質は製造中止にすべきです。
 そして我々の日常生活の面では、便利で安価な化学物質に頼りきった生活を見直さなければならないと考えます。米国でもそれが反省されています。環境ホルモンと共通することですが、建物以外のことでは、まず禁煙、ディーゼルエンジン車を止めること、残留農薬や添加物がたくさん含まれる食品を避けること、ゴミの分別をしっかりすることです。これだけでも化学物質過敏症は半分以下になると予想しています。
●平成11年2月取材

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