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第2回 健やかで快適な家づくりのために

 前回紹介した「化学物質過敏症」は、防腐・防虫処理や強度を増すために建材などに使われている化学物質が原因と言われています。近年一気に深刻化したこの問題に対し様々な取組みがなされていますが、この病気の原因と疑われる物質は数多く、公の基準をクリアしている住宅でもひどい症状に悩まされる人が多いこともご紹介したとおりです。化学物質過敏症は個人差が著しく、その深刻さは患者(及び理解のある医師)にしか把握できていないというのが現状です。
 このような状況の中で、家を建てる側も「健やかで快適な家」を求める声がどんどん強くなってきました。健康にこだわって、素材選びから設計施工まで施主自らの手で住まいづくりを考える人も急増しています。ここでは「健康に暮らす住まい」を実現するには具体的にどんな注意が必要なのかをご説明します。
 今回は設計から引き渡しまでの工程の流れにそった注意点をまとめた「基本編」を、次回以降はその中でも特に「素材編」と「施工管理編」にスポットを当てて詳しくご紹介していく予定です。

わが家の化学物質対策〜基本編

■化学物質対策の基本原則
 化学物質の少ない快適な住環境を作るためには、施主と施工側の双方が化学物質の特性を理解し、一致協力して「適切な材料選択」、「適切な施工」、「換気への配慮」の3つの基本をしっかりと押さえることです。
 最近は素材に対する意識が向上し、無垢の板や紙クロスなど天然素材の内装材が注目を集めていますが、ご存じのように化学物質は建材以外の施工材料(塗料・接着剤・木材保存剤などの現場で使用する材料)や、断熱材など目に見えない部分にも使われています。こうした部分にも注意を払うことを忘れてはいけません。
 また材料に気を配るだけでなく、設計の際や施工の工程毎に適切な対処をすることで化学物質を確実に減らすことができます。また、化学物質は家具・カーテン・絨毯などや衣類、洗剤などの日用品の中にも多く含まれていますから、建った後持ち込まれる分も排出できるよう換気に対する配慮も大切です。
 つまり何が使われるかを知るだけではなく、建築の過程でどんな点に注意すべきか、完成後の生活でどんなことを心がけるべきか、という設計プランの最初から竣工後の生活までを総体的に考えることが必要なのです。

設計・施工に反映されるべき
優先取組物質の室内濃度の特性

1.優先取組物質の室内濃度は、優先取組物質を放散する建材・施工材(接着剤、塗料等現場で使用する材料)の使用量に正の相関があること。
2.建材・施工材の選択によって優先取組物質の放散を低減できること。
3.優先取組物質の室内濃度は、時間が経るにつれ次第に低減していく傾向があり、この低減速度は建材・施工材の種類、放散する物質によって違うこと。
4.建材・施工材の温度が高くなると、優先取組物質の放散量が大きくなる傾向があること。
5.換気量が多くなると優先取組物質の室内濃度は希釈されて少なくなること。

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