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北海道アトピー研究会講演会ダイジェスト
「住まいと暮らしは病んでいないか」
2000年3月26日、札幌市教育文化会館で北海道アトピー研究会主催の講演会が行われました。
北海道アトピー研究会は小児科や皮膚科の医師、建築関係者、ダニやカビ、室内環境の研究者が、アトピー性皮膚炎をはじめとするアレルギー疾患に悩む患者さんの住まいを調査するなど、室内環境改善のお手伝いを目的に設立されたNPO団体(民間非営利組織)です。
今回は、室内の化学物質汚染の現状や、実際に取り組まれている対策について、医療と建築の専門家が講演。その中から、特に参考にしてほしい内容を抜粋してご報告します。 |
1.現代住宅環境と化学物質過敏症 渡辺一彦氏(渡辺一彦小児科医院院長)
■化学物質に対する許容量は個人差が大きい(容器にたとえると一升瓶くらいの人から盃くらいの人まで様々)。
■化学物質過敏症は発症すると症状を誘発する化学物質の種類も増え、深刻になっていく。 ■過敏症は体質の問題というより、許容量を超えるほどの化学物質に接してしまう環境が問題。 ■化学物質過敏症の症状は多彩。個人差があり、現れ方も一定ではない。風邪や疲労が長引いていると思い込むケース、自律神経失調症など心因性の症状と診断されるケースがあり、仮病や怠け病扱いされやすい点が問題。 ■誘因物質の確定は非常に困難。一番の対策は、誘因となりそうな化学物質をできる限り身辺から排除すること。 ■ベークアウト(室内を暖房などで暖め化学物質を強制的に揮発させ、換気してしまう方法)で症状が改善された例もある。 (第5回・体験者ルポ〜vol.1 参照) |
2.患者宅調査とシックハウス対策(初級) 横山幸弘氏(SET建築計画・建築士)
■合板にはJAS(日本農林規格)の、パーティクルボードにはJIS(日本工業規格)のホルムアルデヒド放散量基準を設定している。合板の場合、F1からF3の3段階(F1が最もホルムアルデヒド量が少ない)で表示。
■一般ユーザーの認識の高さとメーカーの対応により、ホルムアルデヒド対策を施した商品は数年前に比べて格段に増え、価格も求めやすくなってきている。 ■ただし、合板をすべてF1にしても、条件により許容量を上回ることもある。「F1にすれば大丈夫」という問題ではなく、素材選び、間取り、換気計画、施工時とすべての工程での注意、施主、設計・監理者、施工者相互の協力など、総合的な視野で計画を進めることが絶対条件。 |
3.家を建てるとき考えた事、考えてほしい事 長谷川 浩(長谷川クリニック院長)
「私が家を建てるときに考えた事」
■化学物質過敏症の予防(化学物質に弱い体質である自分の場合は「症状が進展しない事」、家族の場合は「発症しない事」)を条件の一つにした。 ■住まいに化学物質があふれる要因として考えられる事。 (1)剥がれにくい、狂いにくいなど、見栄え、手入れの容易さ、価格を優先した結果、化学物質を含む素材を大量に使用している。(2)家具、防虫剤など生活用品にも大量の化学物質が使われている。(3)気密化が進む割に換気が不十分。 ■具体的な対策として2点に注意した。 (1)誘因物質を極力遠ざける/防蟻処理には公庫基準の床高プラスひば剤を採用、天然素材でホルマリンを含まない素材を極力採用、室内燃焼ガスを発生するものは換気に注意し生活空間から遠ざける。 (2)十分な換気量を確保する/よく風が通るように窓の配置などを工夫、冬季のために第三種換気システム(強制換気・自然吸気の機械換気システム)を採用。 |
4.あなたが家を建てるときに考えてほしい事 長谷川 浩
■健康な住まいには3つの段階がある/レベル1「現在の病気を改善する」、レベル2「将来的な病気を予防する」、レベル3「近隣や子孫に被害を及ぼさない」。
■レベル1の達成は必須条件。レベル2、レベル3への具体的な対応策としては、(1)建材はリサイクル素材と近隣で採れる素材で構成するのが理想(近隣の材のメリットは輸送に関わるエネルギー消費が少ない点)。 (2)換気の大前提は取り入れる外気が清浄であること。つまり地球環境を守ることが重要。 ■何より大切なのは意識改革。家は「永続的な財産」という発想に戻り、愛着をもって維持管理する、また、化学物質に頼りきった現代の生活全般を見直す、住宅だけでなく学校をはじめ公共建築の対策も早急に視野に入れるなど、化学物質過敏症の問題は長期的・社会的視野で様々な角度から考えることが必要。 |
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