|
■化学物質過敏症の症状
図1に示しますが、化学物質過敏症の症状は多彩です。個人差がありますが、全身の臓器に影響する可能性があります。一般的には単に、目のチカチカや鼻のムズムズや喉のヒリヒリ等の局所の刺激症状だけのことが多いのです。
これらの症状をモデルハウス回りで感じた人もいられるでしよう。この程度ではただ頑固な風邪が続いているだけと思い込む人も少なくないでしょう。また喘息や皮膚炎等のアレルギー疾患の悪化も起こすことがあります。これらもおそらく一つには化学物質による気道の粘膜の刺激や皮膚への刺激によるもの、二つにはダニやカビ、花粉等のアレルギーの増強作用の影響と考えられます。 |
図1 化学物質過敏症の症状 |
しかし、時には頭痛や眩暈(めまい)、動悸、慢性疲労、無気力、イライラ、不眠等の不定愁訴や神経症状、精神症状も起こします。筋肉痛や関節痛も起ることがあります。その場合は化学物質過敏症とわからなければ、自律神経失調症や更年期障害、老化、心身症と誤診されたり、時に仮病扱いされることもあります。そのため自覚症が理解されず悩み、ますます症状が悪化したり、別な心身症を発症させたりすることもあります。
表1に私の経験した化学物質過敏症の各年齢層の症状を示します。小児では圧倒的にアトピー性皮膚炎の発症と悪化が目立ちますが、喘息やまれながら頭痛、視力障害等の神経症状を訴える例もあります。ほとんどがアレルギー外来に通院している小児で、アレルギー疾患を有する小児では一般よりも化学物質過敏症の発症する率が高いと予想しています。私は小児科ですので20才以上の症例のほとんどは、保護者として来院されている成人です。たまたま質問して化学物質過敏症と気付いた例がほとんどです。 |
表1 化学物質過敏症62例の年齢別に見た主要症状 |
年 齢 | 0〜5歳 | 6〜10歳 | 11〜15歳 | 16〜20歳 | 21歳〜 |
---|---|---|---|---|---|
AD悪化 | 8 (1) | 6 (1) | 7 | 3 | 2 |
AD発症 | 1 | 1 | |||
喘息発症 | 1 (1) | 4 | 1 | ||
目鼻の刺激 | 1 | 1 | 11 | ||
頭痛 | 2 | ||||
頭痛・目眩 視力障害 |
2 | 1 | |||
多彩な 全身症状 |
1 | 1 | 1 | ||
チック | 1 | ||||
嘔気 | 1 |
※AD=アトピー性皮膚炎・( )内の数字はかゆみのみ |
成人では局所症状に留まる人が多いのですが、症状がこじれると多彩な不定愁訴、全身症状も起ります。またまだ少ない経験ですが、成人のアトピー性皮膚炎にかなりの影響を及ぼしているようです。こうした症状は発症するまで、接触し続けて一般的には数ヵ月位が必要です。しかし個人によって大変差が大きく、新築に入居して数日から一年以内に出てくるようです。しかし一旦過敏になってしまった例では同じ環境で接して1〜2分、長くても30分以内に症状が出てきます。
|
<<前ページへ |
次ページへ>> |