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■化学物質過敏症の診断
 厚生省の研究班の診断基準がありますが(下記参照)、北里大学のように眼科的な特殊な検査ができる研究機関は別として、一般的な病院では確定診断はできません。特に小児ではこの診断基準が当てはまる例はわずかで、見過ごされてしまいます。そこで、現段階では化学物質過敏症の診断は、「ある物質と何度か接触(広義)して同じような症状が起ること」を確認することにした方が実践的です。もちろん症状は微妙に変化したり、体調等にも左右されます。発症する濃度も多少は変化します。また一般的な血液や尿検査等で判定はできません。最近ホルムアルデヒドに対する特異的IgE抗体検査(アレルギー検査の一種)ができましたが、今まで調べた限りでは全て陰性で、化学物質過敏症と即時型アレルギーとのつながりは否定的でした。つまりこの病気を疑わなけれぱ診断に到達しないのです。ですから正しい診断を求めて医療機関を転々とする患者さんもいます。
 さらに化学物質過敏症の診断に大事なことは、明らかに同じような症状を起こす他の病気ではないという点が必要です。あまりにも症状が長く続き通常の治療によっても軽くならないときは、かかりつけの医師にそうなった環境、状況をじっくり語るべきです。たとえば鼻水や咳が長く続く場合、医師はまずアレルギーを疑うでしょうが、生活環境がどうなっているかを理解してもらう必要があります。冷静に過去をふりかえり、症状が何時ごろから、どんなときに出現するのかをメモして診察にのぞみましよう。

診断基準
A主症状
1)持続あるいは反復する頭痛
2)筋肉痛あるいは筋肉の不快感
3)持続する倦怠感、疲労感
4)関節痛
5)アレルギー性皮膚疾患
主症状の多くは風邪またはインフルエンザ、場合により最近は慢性疲労症候群などと診断されていることがある。

B副症状
1)咽頭痛
2)微熱
3)腹痛、下痢または便秘
4)羞明(まぶしさ)、目のかすみ、ぼけ、一過性の暗点出現
5)集中力、思考力の低下、記憶力の低下、物忘れ、健忘
6)感覚異常、臭覚・味覚異常、olfactory hallucination(幻臭)
7)興奮、うつ状態、精神的な不安定、不眠
8)皮膚の炎症、かゆみ
9)月経過多、月経異常など

C検査
1)副交感神経、交感神経の機能亢進または低下を示す瞳孔異常の診断
2)視覚空間周波数特性の明らかな閾値低下
3)眼球運動の異常、特に垂直面の滑動性追従運動障害(前庭神経障害を含む)
4)神経内分泌系の異常、たとえばbuspirone投与後の prolactin値異常、pyridostigmine投与あるいはdexamethasone投与後の成長ホルモン値の異常変動
5)必要とされた時は、原因とされる化学物質の微量負荷試験(challenge test)または治療によるtherapeutic trialを施行する。
これらの検査は心因性疾患の除外に必要である。

D診断
1)主症状2項目+副症状4項目が陽性であること。
2)主症状1項目+副症状6項目+検査所見2項目が陽性であること。


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