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第4回 施工管理と完成後の対策

連載でご紹介している「化学物質過敏症」はマスコミの注目を集めるにつれ関心が深まり、いままで自律神経失調症や心身症とされてきたたくさんの症例が紹介されるようになりました。また法規制による化学物質管理強化も検討されており(PRTR法)、悩み続けていた多くの患者さんにとってようやく世間の理解と共感を得ることができたのは喜ばしい限りです。
しかしこの問題はようやくスタートラインに立ったばかり。法規制や医学的なアプローチが確立するにはまだまだ時間が必要です。
やはり大切なのは「自分の家」に何をどこまで求めるのか施主自身が考えて、設計・施工者との意志の疎通を十分にはかること。「人まかせにしない住まいづくり」があなたの家族の健康を守るはずです。 前回の素材選び&設計プラン編に引き続き、今回は施工工事に関わる注意点と完成後の暮らしの中で注意したいポイントをご紹介します。

■「早く住みたいから」と
 工事をせかしてはいませんか?
 工程管理と工期計画は慎重に

 念願のマイホームに早く住みたいという気持ちはわかりますが、そのために工事をせかしてはいませんか?
 完成までの住居費用などを考え合わせると短工期で仕上げて欲しいと考えるのももっともですが、化学物質対策を考えるなら工事を急がせるのは百害あって一利なし。慎重な工程管理と十分に余裕を持った工期計画が大切です。
 化学物質は時間を経るほど放散量が減っていきますから、建材は開梱後あるていどの養生期間を設けることが理想です。例えばこの連載の第1回でご紹介した江別市のKさんは、リフォームに使用するカーペット材などの内装材を前もって業者に用意してもらい、施工前にガレージに広げて施工までに少しでも化学物質を減らす工夫をしました。
 またクロスなどの接着剤や仕上げ塗料(これらを施工材といいます)が十分に乾燥する時間を与えずに次の工程へ進むと、揮発しきらなかった物質や湿気を家の中に閉じこめることになってしまいます。これを防ぐためには乾燥時間をきちんと確保し、内装完了後から入居まで間をあけて十分な換気を行うことが大切です。
 もちろん設計プランの段階で化学物質の使われていない建材や施工材を選ぶことが化学物質対策の大前提ですが、念には念を入れて慎重な工程管理をしてほしいと施工管理者に意志を伝えましょう。
 さらに天然素材を使用する場合は規格通りに造られた工業製品と異なり、現場での施工や仕上作業に時間が必要になることも多々あります。その意味でも十分にゆとりをもった工期計画を立て、その間の住居費用や必要なコストもあわせて建設費用を考えましょう。

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